ネタバレします。
この作品は、完成度が高い。
ストーリーは及第点だが、それ以外のキャラ、舞台、俳優、世界観、音響の水準が高い。
ストーリーは芥川賞のように暗くどんよりしている。しかし、それ以外の全ての要素が美しくてその暗い雰囲気を溶かしている。
まず、主人公の周りに嫌な奴がいっさい出てこない。
出し抜いたり、騙したりする悪役がいない。主人公が窮地に陥っても周りの人達が自らを犠牲にしてまで貢ぐ。
とにかく男にも女にもモテる。嫌な奴がでないから作品に臭みがなく起伏もない。
ミミズクの刺青は恩返しのシンボルだと作中に述べていたが、恩をくれた人に対するアンサーは国宝になることだったのかな?
恩を返すという明確な描写がいっさいなかったので、主人公はいつになったら恩を返すのだろうとずっと疑問に思いながら視聴していた。
また、人間国宝のジジイはほぼ唯一の見た目が悪いキャラ。
人間国宝ジジイの光に包まれる舞台のシーンは主人公が美しいと目を輝かせたシーンで、主人公が人間国宝になった後の新境地シーンに繋がる。
容姿が醜い国宝のジジイが美しさとは何かのキーであるように感じた。
人間国宝のジジイが死にかけていた時、セリフの中で、ここには美しい物が何もないから安心すると言っていた。このシーンは動きも遅くてやたらと尺を伸ばしていて退屈であった。3倍速にして欲しいと思ってしまう。
やはり見た目の美しい物や派手な物に人は惹かれると再認識。このあたりは、あえてそうしているのであろう。
また、臨場感を高める技術が多く使われていた。
冒頭、うなじのアップから始まり。ネチョネチョとした効果音が流れる。
エロスの臨場感を高め、日常から切り離された世界に没入させる効果がある。
また、セクロスのシーンは東京タワーを窓から見せることでリアリティを持たせるだけでなく、東京タワーがトリガーになり自身の甘い経験を甦らせるような仕掛けもしてあった。
とにかく、映像にこだわってるのを感じたし、情熱や意図も感じ取れた。
冒頭の艶かしい頸、雪が降る高級料亭での乱闘、子供2人の覚悟の刺青背中、下校途中に河川敷で芸で遊びながら上手くなる二人、夜の京町で二番めでもいいよと美人芸子に言い寄られる少年、幼馴染の胸の中で存在を肯定される四畳半、群青の屋上で目尻を赤くして酔い狂う死の匂いの女形、セクロスホテルの窓の向こうの東京タワー
とにかくエロスの匂いが半端なかった。ただただエロかった。
国宝ではなくエロさ詰め合わせにタイトルを変えた方が良い。よくみたら「国」の漢字の中にエロが隠れている。
ストーリーがどうとかではなく芸術的な作品である。
普通なら大衆受けしないのに人気になったのは意外だった。
神秘的で美しい物に人間は吸い寄せられる。